1971年にリリースされたレッド・ツェッペリンの4枚目のアルバム『IV』(正式なタイトルはなく、通称で呼ばれることが多い)は、ロック史における金字塔的作品です。本作は、ハードロックの確立に大きな役割を果たすと同時に、フォークやブルースの要素を大胆に融合させた多彩な音楽性で、現在に至るまで多くのアーティストに影響を与え続けています。
この記事では、『IV』の制作背景、収録曲の魅力、ハードロック誕生との関連性、そして音楽史における意義について詳しく解説していきます。
制作の背景
1968年に結成されたレッド・ツェッペリンは、ブルースを基盤にした重厚なサウンドで一気に人気を獲得しました。69年には早くも『Led Zeppelin』『Led Zeppelin II』を発表し、爆発的な成功を収めます。70年には『Led Zeppelin III』をリリースし、フォーク色の強い作品に挑戦しましたが、一部の批評家からは「期待外れ」との声もありました。
その批判を乗り越え、「自分たちの音楽性を証明する」という強い意志のもと制作されたのが『IV』です。録音はイギリスのヘッドリーフ・グランジ(田舎の古い館)を拠点に行われ、モバイル・スタジオを導入することで、独自の音響効果を取り入れた革新的な作品が誕生しました。
代表曲とその魅力
Stairway to Heaven(天国への階段)
アルバムの象徴にして、ロック史上最も有名な楽曲のひとつ。静かなアコースティックギターで始まり、徐々に盛り上がりを見せ、最後にはジミー・ペイジの伝説的なギターソロへと到達します。その構成美とスピリチュアルな歌詞は、リリースから50年以上経った今でも聴く人を魅了し続けています。
Black Dog(ブラック・ドッグ)
リフ主導のハードロック・ナンバー。ジョン・ポール・ジョーンズが生み出したリフに、ロバート・プラントのパワフルなボーカルが絡みつきます。複雑なリズムとシンプルなブルース感が同居し、バンドの力量を示す楽曲です。
Rock and Roll(ロックン・ロール)
タイトル通り、初期ロックンロールへのオマージュを込めた疾走感あふれる楽曲。ジョン・ボーナムのドラムイントロは名演として語り継がれています。
When the Levee Breaks(ウェン・ザ・レヴィー・ブレイクス)
ブルースの伝統を引き継ぎつつ、ヘヴィで圧倒的なサウンドを展開。ジョン・ボーナムのドラム録音は「史上最高のドラムサウンドのひとつ」と評され、後のヒップホップやエレクトロニカでもサンプリングされ続けています。
サウンドの特徴
『IV』は、ブルースをルーツにしながらも、ハードロックの方向性を明確にした作品です。
- リフ重視の構造:「Black Dog」や「Rock and Roll」に代表される、パワフルで印象的なギターリフがハードロックの基盤となりました。
- ダイナミズムの追求:「Stairway to Heaven」のように、静から動へのドラマチックな展開を持つ曲が増え、後のプログレやメタルにも影響を与えました。
- 重厚なリズム:ジョン・ボーナムのドラミングが全体を支配し、ロックのリズムの在り方を変革しました。
ハードロック誕生への影響
『IV』は単なる商業的成功にとどまらず、ロックの音楽的方向性を決定づけました。
- ギターリフ中心の楽曲構成 → その後のハードロック、ヘヴィメタルの基本フォーマットに。
- ライブでの拡張性 → 楽曲がライブでさらに発展していくスタイルは、70年代以降のロックバンドの定番に。
- 「天国への階段」の神格化 → ロックを芸術の域に押し上げ、後のバンドが目指す「壮大な楽曲構成」の原型となりました。
批評と評価
発売当初から大ヒットを記録し、全世界で3,700万枚以上を売り上げる史上屈指のベストセラーアルバムとなりました。批評家からも「ロック史における不朽の名作」と評価され、ローリング・ストーン誌やNMEなどの「史上最高のアルバムランキング」でも常に上位にランクインしています。
ジャケットの意味
『IV』のジャケットには、壁にかけられた農夫の絵が描かれています。都市と自然、過去と未来を象徴的に対比させたデザインで、無題アルバムであることと相まって、神秘性を高めています。また、各メンバーを象徴するシンボルマーク(通称「ルーン」)が初めて登場したことも話題となりました。
まとめ
『Led Zeppelin IV』は、ハードロックの誕生を告げると同時に、ブルースやフォークの要素を融合した普遍的な芸術作品です。「天国への階段」を中心に据えたアルバムは、50年以上経った今なお新鮮さを失わず、ロックの原点と未来を同時に感じさせてくれます。
ハードロック、ヘヴィメタル、さらには現代のロックシーンを理解するうえで、『IV』は避けて通れない名盤です。まだ聴いたことがない方は、ぜひアルバム全体を通して体験してみてください。



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